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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)145号 判決

第一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第二 そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

1 成立に争いない甲第二号証の一(特許出願公開公報)、同号証の二(手続補正書)によれば、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が下記のように記載されていることが認められる(別紙図面A参照)。

(1) 技術的課題(目的)

本願発明は、少なくとも二種類の反応性プラスチツク材要素を混合して発泡させるための、高圧ミキシングヘツドに関する(第二頁左下欄末行ないし右下欄第三行)。

このタイプのミキシングヘツドは、ミキシング室において激しい乱流状態が生ずるようにしてプリミツクスを行い、ミキシング室と連結した出口部分(排出部の手前)において流動をほぼ完全に安定させるようにアフタミツクスを行う(第二頁右下欄第一三行ないし第三頁左上欄第二行)。

ドイツ連邦共和国特許出願第二六一二八一二号に係る発明は、出口部分を、ミキシング室に対して垂直でなく同方向に延びたミキシング室より大径のものとし、出口に可変減衰要素(ダンピングプランジヤ)を設けたものである(第三頁左上欄第五行ないし第一三行)。

本願発明の技術的課題(目的)は、上記発明をさらに改良し、構成を簡素にしながら、種々のプラスチツク材料を使用でき、射出圧力などを容易に調節し得るようなミキシングヘツドを創案することである(第三頁右上欄末行ないし左下欄第五行)。

(2) 構成

本願発明は、上記技術的課題(目的)を解決するために、その要旨とする特許請求の範囲第一項記載の構成を採用したものである(第一頁左下欄第五行ないし右下欄第六行)。

清掃プランジヤは、伸長された作動位置から引き込められた休止位置へ移動し、休止位置においてはミキシング室の出口が開かれているか、少なくとも部分的に開いているように構成される。休止位置のストツパは、望ましくはシリンダハウジング内に螺入される調節ピストン(調節プランジヤ)によつて形成される(第三頁左下欄第一七ないし右下欄第五行)。調節ピストンのネジ込み深さ位置は、シリンダハウジングに設けられたネジ穴に螺入するように構成されたロツクボルトによつて容易に固定することができる(同頁右下欄第八行ないし第一一行)。

別紙図面Aはその実施例を示すものであつて、図1ないし図3が第一の実施例の断面図(清掃プランジヤはそれぞれ異なる位置にある。)、図4が第二の実施例の断面図(清掃プランジヤは休止位置にある。)である。図において、12が清掃プランジヤ、16が排出部、18がミキシング室、20が調量プランジヤ、26が出口、28が調節ピストン(清掃プランジヤの休止位置制限ストツパ)である(第六頁右下欄第四行ないし第一八行)。

(3) 作用効果

本願発明によれば、清掃プランジヤが二つの機能(すなわち、出口部分を清掃する機能と、減衰(ダンピング)機能)を果たすので、乱流混合をダンピングするための補助プランジヤ等の構成が不要である(第三頁左下欄第八行ないし第一三行)。

すなわち、調節ピストンの位置を可変とすることによつて、絞り効果(減衰効果)を可変とすることができるのである(手続補正書第二頁第四行ないし第六行)。

2 相違点の判断について

原告は、引用例にストツパ41の位置が変動可能であることが開示されていない以上、引用例記載の注出口31は開口の程度が可変の構造であると理解することはできない、と主張する。

そこで引用例記載の技術内容を検討するに、成立に争いない甲第三号証(特許出願公開公報。別紙図面B参照)によれば、引用例記載の発明は審決認定の事項を特許請求の範囲とする多成分のポリウレタン樹脂の混合装置に関するものであつて(第一頁左下欄第六行ないし第一五行)、混合開始時における各樹脂成分の初期流速を整えるためには各樹脂成分の流入口を開閉するピストンを高速で切り替えねばならないが、ピストンの速度を速くすると、混合液が成形型へ送入流速も速まり、成形型内における気泡の巻込みを生じて成形不良を生ずるおそれがあること(第二頁左上欄第一七行ないし右上欄第三行)などを従来技術の問題点として捉え、従来は一混合室、一ピストンによつて行われていた混合開始停止の切替えと成形型への送入を、二混合室、二ピストンによつて行うこと(第二頁左下欄第四行ないし第八行)を特徴とするものと認められる。そして、同号証によれば、第一次混合室10及び混合ピストン20によつて構成される第一次混合部Mと、第二次混合室30及びクリーニングピストン35によつて構成される第二次混合部Nを含む一実施例が示され(同頁右下欄第三行ないし第九行)、第二次混合室30に嵌挿されたクリーニングピストン35が注出口31の開閉制御及び混合樹脂の成形型への送入を行うこと(第三頁右上欄第四行ないし第六行)のほか、a及びbの記載(同頁右上欄第一〇行ないし第一六行、左下欄第一〇行ないし第一七行)がなされていることが認められる。

このように、引用例には、クリーニングピストン35が注出口31の開閉制御を行うこと(第三頁右上欄第四行ないし第六行)、クリーニングピストン35にはストツパ41が設けられて注出口31の開き位置を制御し、注出口31に絞り効果を与えること(aの記載)、クリーニングピストン35の開き位置の調整によつて混合効果が向上し得ること(bの記載)が明記されているのであるから、引用例記載のクリーニングピストン35は、ストツパ41を調整することによつて注出口31の開口の程度を制御し得る構造のものであると理解すべきことは当然である。このことは、引用例記載の発明の実施例を示す別紙図面Bの第1図と第2図が、第一次混合室10と第二次混合室30を連通する注出口31が全開した状態ではなく、クリーニングピストン35が注出口31のほぼ半分を塞いだ状態を図示していることによつても、明らかに裏付けられるというべきである。仮に、引用例記載のクリーニングピストン35のストロークが原告主張のように一定であるならば、クリーニングピストンのロツドを当初から一定の長さに設定しておけば十分であつて、同ロツドに開き位置を制御するストツパ41を設ける必然性は考え難いところである。

3 以上のとおりであるから、引用例には清掃プランジヤの休止位置制御ストツパが清掃プランジヤの自由端部をしてミキシング室の出口の開口の程度を加減せしめるように変動可能である構成が示されているとし、本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした審決の認定判断は正当であつて、審決には原告が主張するような違法はない。

第三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却する。

〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。

少なくとも二種の反応性プラスチツク材要素を混合し、かつ、発泡させるための高圧ミキシングヘツドであつて、

該ミキシングヘツドが、ミキシング室と調量プランジヤと清掃プランジヤとを含み、

ミキシング室は、該ミキシング室内に開口しているプラスチツク材要素用のノズルオリフイスと、膨脹剤用のノズルオリフイスとを有しており、

調量プランジヤは、ミキシング室内を往復運動できるようになされており、

清掃プランジヤは、ミキシング室に関してほぼ垂直に延び、かつ、ミキシング室に連結している排出部内を往復運動するようになされている、高圧ミキシングヘツドにおいて、

安定領域としての上記排出部(16)が、上記ミキシング室(18)よりも大きい寸法となされており、

可変減衰手段がミキシング室の出口(26)に設けられており、該可変減衰手段は、上記排出部(16)に面している上記清掃プランジヤ(12)の自由端部によつて形成されており、

上記清掃プランジヤの休止位置制御ストツパ(28)が、上記清掃プランジヤの自由端部をして上記ミキシング室の出口(26)の開口の程度を加減せしめるよう、変動可能であること

を特徴とする、高圧ミキシングヘツド(別紙図面一参照)

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙図面A

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別紙図面B

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